・・・世の中怖いことばかり・・・
昔から臆病虫がついている
この虫が事あるごとにヒューっと風を起こし
いらぬ不安や心配で苦しむ
子供の頃夜一人でトイレにいけなかった
カーテンや障子戸の裏に幽霊がいるのではないか?
用を足した後振り返るとそこにいるのではないか?
そんな不安でトイレに行けない日が続いた。
そのくせ夏によくある怪談番組はなぜか見てしまう
夜目を覚ましそのことを激しく後悔する
そしてヒュー、臆病風が吹きすさび
自分のなかで幽霊と遭遇するイメージが出来上がる
尿意を必死に抑えながらもう二度と怖いテレビを見るものか
と心に誓うが
翌日には親の背中の陰から恐る恐るまた見てしまう自分がいる
この頭の悪い無限ループ
この虫と共に人生を歩んできた
なにをするにも不安や心配が先行して思いきった行動がとれない
よく言えば慎重なのだが何事も過ぎるとあまりいい事はなく
好機を逃したりかえってそれが裏目に出たりする
石橋を叩きすぎて壊してしまったり
叩いて確認したにもかかわらず足を滑らせ落ちてしまっては
目もあてられない
この虫に効く殺虫剤があれば全身に振りまきたいところだが
臆病神という呼び名もあるようにこれが神であるならば
さすがに殺虫剤は失礼にあたる
それにこんな社会的不適合者が今まで
それほど大きな問題も起こすことなく生きてこれたということは
ひとえにこの神が寄り添ってくれていたことにほかならないではないか
そう考えれば時折吹く不安や心配を煽るこの風も
なんだか心地よく感じられなくもないし
そんなもんさ・・・と自嘲することもできる。
昨今のニュースを見聞きしていると幽霊よりも
生身の人間の怖さが浮き彫りになり
テレビでは安心安全に生活するには?と言った
無意味な議論がなされている
突然降りかかる災難を防ぐことは難しい
出来るだけ周囲に目を配るくらいしかないのかもしれない
すると意外なところで意外な恐怖を発見してしまう
よく行くスーパーのレジ横にお買得品として置かれている
常温で3日も大丈夫な80円で買えるハンバーガー
・・・怖すぎる・・・ 長谷部