耄碌している・・いや、この表現は正確ではない
日々、耄碌していっている

体力的なことはもちろんのこと記憶力や意欲の低下が甚だしい
この現在進行形の事象をひとつひとつ思い返してみても
抗えない自然の理に拍車がかかっているのが分かる
血圧が高めのせいか軽いめまいや頭痛に悩まされながら
それでも毎日、壊れるほどに目覚ましを叩き重い体に鞭を入れるのです。

とはいえ、こんなことをつらつらと並べ立てたところで
何か変わるわけではないので
気分転換に美術館にでも行ってみようかと思い車を走らせる
しかし、近くで行われている催し物のためか近隣の駐車場はすべて満車
会場近くの駐車場に立つ誘導員の手には六十分待ちの札
早々に諦めていつもの本屋にむかいます。
美術本の中から数少ない画集を手に取り
まるで写真の様に描かれた人物画や風景画を見てため息が漏れる

私も絵を描くのは好きだがしょせん落書きレベル
頭で思い描いたものをこんなに美しく表現出来たならば
どんなにすばらしいでしょう。

専門的なことは一切わからないのですが
美しい風景画ほど周りの背景をうまくぼかしている感じがします
見たままを忠実に表現しようとすると
すべてを克明に描こうとしてしまうのですが
かえって平面的になり違和感を覚えてしまう
どの部分をどの程度ぼかしていくのか
この、ある種　手を抜くことにより奥行きのある
写真と見間違えるほどの美しい作品に仕上がるのだと
素人ながら思うのです。

日々の生き方も細かいことを気にしすぎると
かえって味気ないものになってしまいそうです。
「世の中は九分が十分」
私にはそれでも多い

身体的な能力の低下は喜ばしいことではないけれど
それゆえに、うまく手を抜きながらぼかせる所はぼかしていく
そして人生の終焉の時に
名画とは程遠いものの少なからず奥行きのある落書きにニヤリとしながら
「悪くない」
と思えるようにしたいものです。

耄碌している・・いや、この表現は正確ではない
日々、創作活動に注力している・・・。
長谷部