お風呂に入ろうと服を脱ぎ
ふと、鏡に映る自分の姿をみると
鎖骨あたりにあるアザが目に入る。
「まだ残っているのか・・」

１８歳のとき仕事中に荷物をぶつけて出来たアザが
３７年経った今も変わらず残っている。
これまで何度もケガをしたしアザもつくりましたが
不思議とこれだけは、まるで理由があるかの様に消えずにいます。

１５人ほどの小さな工場で皆、職人気質
一癖も二癖もある人達ばかり
よくもまあこれだけ変わり者が揃ったものだと
変わり者の私が思うのだから相当なものです。

思えばこの職場でさまざまな経験をさせてもらい
多くの気づきを得ることができました。
このアザは本に挟むしおりのように
あの頃の記憶のページを開き
「お前はあれから成長しているのか？」
と投げかけられているようです。

シワが増え髪は白く薄くなり見苦しくなっていく一方
残念ながら中身はいたずらに馬齢を重ねてきただけで
なにも変わっていません。

憎悪と羨望と嫉妬がつねに心の片隅にうごめいている
しかし自分はそんな人間なのだと認められることが出来たのが
唯一の救いでしょう。
お墓参りへ行くのも
「これで少しでもいい事があれば」
という、よこしまな考えを捨てきれません。

そんな心を見透かされるようにお寺の壁には
「きれいな心で合掌、礼拝」
と書かれている
「いやはや、すべてお見通しですな・・・」
これからも目立たず騒がず生きていこうと思います。
長谷部